インタビュー第2弾です。千田実さんとは机上風景の前身の団体の時から、かれこれ18年くらいのお付き合いでしょうか。海外公演にももちろんご同行頂き、全ての作品で照明スタッフとして活躍してくださっています。公演アンケートに「照明がすごく綺麗でした」というご意見がない時はありません。
ベテラン照明家・千田さんにお話を伺いました。
前編・後編に分けてお送りします(後編の掲載は6/10を予定)
――今回、机上風景4年ぶりの新作ですが、脚本を読んでみていかがでしたか。また、どんな作品になると思いますか?
読んだ最初の印象ではファンタジーかなと。でもリアリティを持って語られる物語。観客に登場人物のそれぞれの想いが伝わるといいなと思います。
――そうですね。不思議なお話ですので、千田さんの照明に助けてもらうことになりますね。いつものことですが(笑)。ところで照明のプランはどうやって作っていくのですか?
出発点になるのは脚本を読んで思い浮かべたイメージ。次に美術(大道具などの舞台セット)があればそれの見せ方を考えます。私は脚本と舞台美術プランを元に一度プランの下書き(デッサン)を作ります。
稽古が進み作品が形作られていく中でこの下書きにどんどん足していくこともあるし全く違うものになったりもします。もちろん最終的には演出家の判断に委ねるわけですがどこかワンポイントでも自分なりの遊び・こだわりを入れられたらいいなといつも考えています。
――なるほど。千田さんの照明にはならではの空間を浮かび上げるアイディアがあると感心していました。ど真ん中ではなく、観る者の想像を膨らませる粋なポイント、とでも言うのでしょうか。では、これまでそうして立ててきたプランで、一番頭をひねった現場があれば、教えてください(机上以外でも)。
机上で言えば、アリゲーター(『GOOD NIGHT ALLIGATOR』2007年上演)。いつもとは違うやり方で面白いことが出来ないかと考えました。
――下水道の中のお話で、水の反射を劇場の壁に写し出していましたね!
思いついてしまったので (笑)。きれいに写すのが少し大変だったけれども面白いことが出来たと思います。これもさっき言った遊びのひとつですね。
――いつも様々なアイディアを持ち込んでくださって、ありがとうございます!経験もすごく豊富でいらっしゃるし、色んな劇場でお仕事をされていますね。劇場によって設備がまちまちだと思います。どうやって対応していくのですか?
劇場の設備は変えられないのでそこでできる最善を考えます。
照明としては天井が高い方が作りやすいのですが、たとえ狭くてもその会場でなければ生まれない空気というものもあるのでこちらの理想ばかりも言っていられません。
通常の公演ではひとつの環境に合わせれば済むのですがツアーでは同じ作品を違う環境でやらなければならないことが多く、例えば学校の体育館、ライブハウス、大ホールという広さも設備も全く違う環境で公演したこともあります。そういう場合は作品の印象を変えずに会場ごとにプランを考えるのは苦労します。
――劇場が変わると作品の印象もガラリと変わりますものね。それをなるべく寄せるという、そんな努力があるとは知りませんでした。海外の劇場もたくさん行かれてますね。確かエジプトもでしたか?
カイロの国際演劇祭への参加でした。その時の劇場は日本人が設計した建物だったので日本の劇場と近い感覚がありました。
ただ現地スタッフの対応は全然日本と違います。そういう意味ではロシアが最強!
――聞いたことあります!担当が決まっていて、それ以外のことは完全ノータッチなんですよね?
そう。部屋や倉庫ごとに担当の人が違い、その人が鍵を持って帰るともう開けられない。マスターキーというものがないのでその日はもう諦めるしかない(笑)
交代制でスタッフが入れ替わる時も引継ぎとかしないみたいで一から説明するはめになったり、アルバイトなので分からないと言われたり…。
他の国でも多かれ少なかれそういうことが起こる。彼らにしてみればいつものやり方を守っているだけなのだろうれども。
日本の劇場スタッフは優秀で効率的だと思います(笑)
――日頃あたり前だと思っていることが、不慣れな場所に出てみるとありがたみがしみじみ分かることってありますよね。・・・そんな四文字熟語かことわざもありましたね。(後編へ)
(インタビュー・構成・編集 根津 弥生)