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制作

Interview vol.4 『音で酔わす男―堀越竜太郎の巻 後編』


前編(6/17掲載)のつづきです

――先ほどと似たような質問になってしまいますが、舞台本番でオペレーションをする際、一番気を使うところは何ですか。

お芝居に関して言えば、様々な台本・演出にもよりけりなので一概には言えませんが、作品の世界において基本的にはやはり、あくまで“効果”であって、それ以上でもそれ以下でもない。というのが、僕の中ではどこか根幹にある気がします。

作品の世界観や演出の意図に沿ったうえで、どれだけそれを立体的にお客様へ伝えられるか、また、舞台上の役者さん達と同調していけるか・・・「一緒に演じる」というのもおこがましいですが、とにかく、その同じ空間に「在る」という感覚。浮いたり、はみ出したりしない。これはいつも意識していると思います。

机上作品においては、僕の立場はいい意味で「印象に残らない」ことが肝ですかね(笑)。

――あまり意識したことありませんでしたが、日常でも人間が意識して出す以外の「音」は、そこに紛れ込れているというか、場に一体化していると言えばいいのか。音の「在る」というのは素敵な表現です。堀越さんは意図的に音を風景に配置していくのですから、とても繊細なお仕事ですね。

さてさて、まだ聞きたいことがあるのです。長い付き合いのなか、劇団が変わってきたところ、変わらないことなどあれば教えてください。また、堀越さんから見て、机上風景とはすばりどんな劇団ですか?褒めてくださいって言ってません。悪口でもいいんです(笑)

(笑)まず純粋に、年月に沿って人員は変わりますよね。書く人間だったり演じる人間だったり・・・。

机上のすごいなと思うところは、その年月や人間、作品等の具体的な変化に対して本質が全く揺るがない。当たり前のように見えて、実は逆に、活動期間が長ければ長い方がそういう部分て難しいように思えるんです。

でも外部の立場から見ても、毎回稽古から始まり、千秋楽を迎えるまでに関わっていくなかで、その過程が面白いなーと思うのは・・・とにかく個々の取り組む意識がものすごく高いんですけど、かと言って火花を散らすわけではなく、でもその高い熱量は常に保たれたまま、一点に向かって静かに静かにギューっとかたちが形成されていくような感じ・・・。

そういったスタンスがブレずに今日まで続いているのはすごいことだな、と。

机上風景という組織は「誰のもの」みたいのがないのかな。いい意味で。

看板が、それぞれみなさんの後ろにちゃんと見える感じ。それがすごくいいな、と思っています。

――やっぱり褒めちゃいましたね。圧力掛かってましたか?すみません(笑)。ずっしりとくるお言葉、ありがとうございます!最後に、これまでの机上風景の作品で一番好き、是非再演したい作品があったら教えてください。

一番好きを選ぶのは酷だなーー(笑)。一番か…

机上風景と長い時間かけて関わらせていただいて、好きというか、衝撃だったのは『乾かせないもの』(2006年初演、2009年再演、2013年海外公演)かな。

回を重ねていくなかで、机上の世界観が分かってきた頃で、ようやく余裕を持ってこの劇団での音の役割、在り方が見えてきたころでもあったんです。それまではなかなか咀嚼しきれない部分が多くて、常に消化不良を起こしていたというか・・・(苦笑)。

そういった意味でも少し腰据えて仕事ができた作品っていう印象も含まれていると思います。もちろん、作品も素晴らしいものですよ。ただ、個人的にはあん~まり再演は望んでいないというか・・・

――再演したくない?びっくり!そうなのですか? 

いえ、もちろん大いに「望むところ」なんですが…なんだろう、やはり作品の内容が、特別な重厚さと深いメッセージ性を持っているだけに、これに関しては単なる劇団の「おススメ作品」としての再演ではなく、もっと広く発信し続けていってもいいのではないかなと・・・。

初めて見た時、作品そのものが何か「大きな役割」みたいにも思えたんです。だから、さらりとチョイスできる作品ではないかな、と。またやるとしたら、これはこれで、他とはまた違った大きな「覚悟」みたいなものが必要だぞこれ…みたいな。当時はそんな感覚があったと思います。

でも基本的には、どの作品も再演は大歓迎ですよ。ですからやっぱりこの場合、「望んでない」って言い方は語弊ですよね。インタビューって怖っ・・・(苦笑)。

――いえ、表現としてよく分かります、「望んでいない」というのが。あの芝居をやるとみなボロかすになりますものね。ですが普遍的な作品で、堀越さんのおっしゃる通り役割を持って生まれてきたと思います。

では、気軽~な感じで、再演したい作品は?

アリゲーター(『GOOD NIGHT ALLIGATOR』2007年上演)はやっぱりやりたいです。

当時、自分のなかでいろいろとやりきれなかった事があるのも一つなんですが、とにかく作品として、ただ純粋に面白かった(笑)。

劇場の空間を上手く生かしたセットもまたどハマりしていて、これもまた「机上版、エンターテインメント」って感じ(笑)。

他には『café Lowside Ⅰ&Ⅱ』(2001年上演、2004年上演)、『MEGU』(2002年上演)とかですかね。

――アリゲーターはスタッフさんに絶大な人気です(笑)。またできる機会があったらいいですね。ところで堀越さん、かつては俳優もされていたそうですが、ここだけの話、出演したいと思う作品はありますか?

そこを掘り起こしますか・・・(苦笑)。

正直、昔は「自分が出るとするなら」みたいな妄想はあったのですが、毎回寿命を削る勢いで臨んでいる皆さんを見ていると、「これは無理かも・・・」と(笑)。

稽古始まって千秋楽までを想像すると、もう自分はもたないかも、と(苦笑)。ほんと、役者さんてすごい。

でも、初期の頃に『MEGU』(2002年上演)という作品がありまして、これには魅かれましたね。舞台セットも素敵でした。

とある山中での物悲しい出来事なのですが、白樺に見立てたオブジェが並び、本物の落ち葉を敷き詰めて、これまた本物の朽ちた木をぼんと置いたものだったのですが、あぁ素敵だな、そこに居たいな、という感覚が湧きました。

あ、でもアリゲーターもいいですね。それから、『乾かせないもの』の初演の時も、軍曹の存在感に憧れるところはありました。

こう振り返ると、「出演したい」というよりは、「その空間に生きてみたい」という感覚の方が強かった気がします。

――答えにくい質問をしてしまってすみません(笑)。堀越さん、楽しいお話をたくさんありがとうございました。

今回の作品で、堀越さんの音がどう在るのか、とても楽しみですね。劇場ごと海に連れていってくれるのかもしれません。池袋に涼を求めにぜひいらしてください。どうぞお楽しみに♪

(インタビュー・構成・編集 根津弥生)

※Interview vol.5(最終回)は、6/24午前掲載予定です

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